愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「雅。そうやって求めてくれるのは嬉しいが、連日のようにしていては君が疲れないか?」
「大丈夫です。お願いします」
「だが、顔色がよくない。それにここ最近ずっと不安そうにしているだろう? いったいどうしたんだ?」

 とうとう訊かれてしまった。だが、それも無理ない。いつも受け身だった雅がこうもせがんでいれば、疑問に思わないはずがないのだから。

 雅は清隆に行為をせがむ一方で、その理由については少しも話せないでいた。

 子供のことを言えば、清隆を責めているように聞こえるかもしれない。義母から言われたことを告げれば、義母を悪く言っているように聞こえるかもしれない。

 そんなふうに思って何も言えないでした。ただただ清隆にせがむことしかできなかったのだ。

 清隆からこうしてはっきりと訊かれても、雅はやはりそれを口にできない。口ごもってしまう。

「本当にどうしたんだ? 雅? 私にも話せないのか?」

 清隆の言葉にハッとする。今、自分が向かい合っているのは清隆なのだ。いつもいつも雅を受け入れてくれるその人なのだ。

 そのことに気づけば、雅は恐る恐る今の悩みを打ち明けるためにその口を開いた。

「……子供が……こんなにしていただいているのに子供ができません」

 苦しい胸の内を吐き出すように、雅がそれを告げれば、清隆は雅をそっと抱き寄せ、その腕で優しく包み込んでくれた。
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