愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「今日はどうする? あまり調子よくないだろ? このまま寝るか?」
「……寝ます」

 雅は迷い迷い答えた。清隆の言う通りあまり体調はよくない。体も心も不調な状態では、それこそ妊娠も難しいだろう。一人で思い詰めてしまっていたけれど、ようやくこのくらいのまともな思考回路には戻れた。

 ただ、それでもまだ不安を消せないでいる雅に対し、清隆はそれを打ち消すくらい迫力のある言葉を与えてくれた。

「雅。そんな不安そうな顔をするな。明日は休みなんだ。日中にいくらだってできる」
「っ!?」

 日中からだなんて、そんなはしたないことをと思うが、清隆から提案されれば嬉しかった。承諾するのはものすごく恥ずかしいが、自分のためにそこまでしてくれる清隆にちゃんと応えねばと、雅はしっかりと頷いた。

「明日に備えて今日はゆっくり休め」
「はい」
「おやすみ、雅」
「おやすみなさい」

 雅は、明日のことを考えるとドキドキとしてすぐには寝つけなかったが、清隆のぬくもりを感じているうちにいつの間にやら眠りに落ちていた。

 結局、翌日は、昼食を食べたあとに寝室へ連れ込まれ、雅がもう無理だと言うまで解放してもらえなかった。しかも、清隆はこれでもかというくらいくらいに、雅へ愛の言葉を囁くものだから、清隆の愛で満たされまくって、この日ばかりは不安を感じる暇もなかった。


 だが、それからしばらくして生理が来ると、雅はまたもや大きな不安に苛まれていった。清隆は雅が不安がるたびに、優しく包み込んでくれるが、雅の不安は消えないままであった。
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