愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***
「はあーっ」
清隆が大きなため息をつくと、鳴海が渋々といった様子で清隆に声をかけてきた。
「そんなにため息ばかりついてどうしたんだよ?」
鳴海に聞いてほしくてため息をついていたわけではないが、自分一人で抱えるのもつらくなっていた清隆は、ぼそりと今の悩みを打ち明けた。
「……雅の様子がおかしいんだ」
「おかしいって?」
「やたらと求めてくる」
「……は? ただの惚気か」
鳴海の物言いにムッとするが、自分の言い方が悪かったのだと思い直して、もう一度言い直す。
「違う。そういうことではない。切羽詰まったような様子なんだ」
「切羽詰まった? お前に愛されているか不安に思ってるんじゃないか?」
「それは言葉でも態度でもちゃんと伝えている。雅もちゃんと受け止めてくれている。だが、最近はずっと不安そうにしていて。早く子供を欲しがっているようなんだ」
ここまで言えば、鳴海は納得して頷いている。
「なるほど。子供ができなくて不安がっているのか」
「ああ。だが、まだ結婚して一年も経っていない。雅はまだまだ若いし、そこまで焦るものでもないだろ?」
子は授かりものというし、そう簡単にできるものだとは思っていない。清隆も雅もまだ二十代で、セックスレスというわけでもない。むしろ多いほうだ。だから、心配しなくてもいずれはできると清隆は思っているのだ。焦るにはまだ早いだろうと。
清隆のその想いに鳴海は軽く同意を見せるが、別視点からの意見も述べてくれる。
「確かにな。だが、女性からするとまた違うんじゃないか? 出産のタイムリミットなんかを考えたら不安になるのかもしれない。もしも子供が複数人ほしいなら、早いに越したことはないだろうしな」
「そうかもしれないが……それにしたって……」
やはり焦るには早すぎるだろうという気持ちは消えない。だが、鳴海の言うことも理解できて、清隆は続く言葉を上手く紡げなかった。
「そういうことはしっかりと二人で話し合ったほうがいい。家族に関する大事なことだろ?」
「ああ。まあ、話してはいるんだがな……もっとちゃんと話し合うか」
最後の言葉はほとんど独り言のように小さく呟いていた。
ずっと雅に寄り添ってきたつもりでいたが、まだ足りなかったのかもしれない。知ったふうに雅を諭してきたが、雅の立場に立てていなかったのかもしれない。
清隆はそう考えて、もっとしっかり妊娠・出産について学んで、ちゃんと妊活に協力してやろうと思った。できるかぎり雅の不安をなくしてやろうと。
しかし、調べることなんてあとにして、さっさと雅と話し合うべきだったと、清隆が強い後悔の念を抱くのは、割とすぐのことであった。
「はあーっ」
清隆が大きなため息をつくと、鳴海が渋々といった様子で清隆に声をかけてきた。
「そんなにため息ばかりついてどうしたんだよ?」
鳴海に聞いてほしくてため息をついていたわけではないが、自分一人で抱えるのもつらくなっていた清隆は、ぼそりと今の悩みを打ち明けた。
「……雅の様子がおかしいんだ」
「おかしいって?」
「やたらと求めてくる」
「……は? ただの惚気か」
鳴海の物言いにムッとするが、自分の言い方が悪かったのだと思い直して、もう一度言い直す。
「違う。そういうことではない。切羽詰まったような様子なんだ」
「切羽詰まった? お前に愛されているか不安に思ってるんじゃないか?」
「それは言葉でも態度でもちゃんと伝えている。雅もちゃんと受け止めてくれている。だが、最近はずっと不安そうにしていて。早く子供を欲しがっているようなんだ」
ここまで言えば、鳴海は納得して頷いている。
「なるほど。子供ができなくて不安がっているのか」
「ああ。だが、まだ結婚して一年も経っていない。雅はまだまだ若いし、そこまで焦るものでもないだろ?」
子は授かりものというし、そう簡単にできるものだとは思っていない。清隆も雅もまだ二十代で、セックスレスというわけでもない。むしろ多いほうだ。だから、心配しなくてもいずれはできると清隆は思っているのだ。焦るにはまだ早いだろうと。
清隆のその想いに鳴海は軽く同意を見せるが、別視点からの意見も述べてくれる。
「確かにな。だが、女性からするとまた違うんじゃないか? 出産のタイムリミットなんかを考えたら不安になるのかもしれない。もしも子供が複数人ほしいなら、早いに越したことはないだろうしな」
「そうかもしれないが……それにしたって……」
やはり焦るには早すぎるだろうという気持ちは消えない。だが、鳴海の言うことも理解できて、清隆は続く言葉を上手く紡げなかった。
「そういうことはしっかりと二人で話し合ったほうがいい。家族に関する大事なことだろ?」
「ああ。まあ、話してはいるんだがな……もっとちゃんと話し合うか」
最後の言葉はほとんど独り言のように小さく呟いていた。
ずっと雅に寄り添ってきたつもりでいたが、まだ足りなかったのかもしれない。知ったふうに雅を諭してきたが、雅の立場に立てていなかったのかもしれない。
清隆はそう考えて、もっとしっかり妊娠・出産について学んで、ちゃんと妊活に協力してやろうと思った。できるかぎり雅の不安をなくしてやろうと。
しかし、調べることなんてあとにして、さっさと雅と話し合うべきだったと、清隆が強い後悔の念を抱くのは、割とすぐのことであった。