愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***

 とうとう残り一ヶ月。ここまで来ると雅はもう四六時中不安に襲われて、ひどく追い詰められていた。清隆にどれだけ抱いてもらっても不安がなくならない。

 清隆の言う通り、思い詰めるのはよくないとわかってはいても、自分の意志でどうにかできるものではなかった。

 せっかく清隆が雅の心を解放してくれたというのに、雅の心は負の感情ばかりを生み出して、気分は沈むばかり。ネガティブなことばかりが思い浮かぶ。

 清隆が変わらずにずっと優しかったことは救いだったけれど、跡継ぎをもうけなければという思考にとらわれていた雅には、その優しさだけでは足りなかった。

 一日、一日とその日が迫るにつれ、清隆との別れの日も近づいていると感じて恐ろしくなる。怖くて怖くてたまらない。清隆に泣いて縋りつきたくなる。

 それでも清隆の前で情けない姿は見せたくなくて、必死に取り繕った。大好きな清隆を煩わせたくはなかった。
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