愛なき政略結婚は愛のはじまりでした

　突然家を訪れた義母は、誰だかわからない女性を引き連れて、有無を言わさず家へと上がり込む。状況がまったく飲み込めないまま、雅はリビングテーブルに義母と見知らぬ女性と向かい合うようにして座った。

「雅さん。それでいい知らせは聞かせてもらえるのかしら？」
「……申し訳ございません」

　雅は深く頭を下げる。怖くて頭を上げられない。

　すぐに義母から大きなため息が聞こえてきて、雅はびくりと肩を震わせた。

「やはりだめだったのね。あなたには無理だろうと思っていたのよ」
「……申し訳ございません」
「桜子さんを連れてきて正解だったわ」

　義母の言葉に思わず義母の隣に座るその女性を見遣る。楚々として品のある女性だ。雅と同じか少し下くらいに見える。

　この女性が桜子なのだろうが、まったく見覚えのない女性にどう対応すべきか悩む。

　雅がこの女性に触れるべきかどうかを悩んでいれば、義母はそれを遮るように冷たい声を浴びせてきた。