愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「私は結婚から一年と言ったわよね?」
「……はい」
「あなたは役目を果たせなかった。そういうことよね?」
「……はい」
「だったら、もうここにいる資格はないわね」
「っ……」

 情け容赦ないその言葉に喉が詰まる。受け入れたくない現実をまざまざと突きつけられて、気が遠くなる。もう何も認識できないくらい感覚が鈍ってくるが、続く義母の言葉で雅は強制的に現実へと引き戻される。

「こんな結果になって、さぞやご実家のお父さまも落胆されていることでしょうね」

 父の存在を思い出して息が苦しくなる。手が震える。こんなことが知られてしまえば、絶対に父が許さない。きっと恐ろしい制裁が待ち受けている。

 この先のことを想像して雅が怯えていれば、義母はさらに雅を絶望へと突き落としてくる。

「でも、ご安心なさって? 私もひどい人間ではないのよ。こうなるだろうと思って、ちゃんとあなたのご実家には話を通しておいてあげたから」
「っ……」

 それは死刑宣告にも等しく、雅は思わず息を飲む。この現状を父に伝えられているだなんて、もうどうやったって逃れようもない。残酷な運命がすぐそこまで迫っている。

 あまりの恐怖に雅が血の気を引かせていれば、義母はさらなる衝撃の言葉を言い放ってきた。
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