愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
　しばらくして雅の涙が落ち着くと、ようやく誠一郎が何があったのかと問うてきた。雅が落ち着くのを待っていてくれたようだ。散々泣いて、少し落ち着きを取り戻していた雅はここに至るまでの出来事を誠一郎へぽつりぽつりと語りはじめた。義母から言われていたこと、今日自分の身に起こったことすべてを話した。

　雅のその話に誠一郎は時折強く憤慨しながらも、雅のことをとても心配そうに見つめていた。

「姉さんがそんなつらい想いをしていただなんて……こんなことになる前に助けてやれなくてごめん」
「そんな、誠一郎さんが謝ることではないわ。むしろ迷惑をかけてごめんなさい」
「姉さんこそ謝らないでよ。姉さんは悪くない。それに姉さんがここを訪ねてくれてよかったよ。本当によかった。あんなところに戻らなくて本当によかった」

　誠一郎はいつも父とのことを心配してくれていたから、今回も同じように心配してくれているのだろう。誠一郎に迷惑をかけてしまっていることはやはり心苦しく思うが、それでもここへ来た選択は間違いではなかったと、誠一郎の優しい表情を見ながら雅はそう思った。
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