愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「それで、お義兄さんは? お義兄さんは全部わかっていて、こんなことを許したわけ?」

 その質問の答えは雅にはわからない。雅は清隆に何も言えていなかったから、本当のところがわからないのだ。

 けれど、雅をいつも気遣ってくれる清隆がこんなことをするとは思えなかった。「愛している」の言葉が嘘だとは思えなかった。雅は清隆の想いを信じている。だから、雅が思う答えは否であった。

「わからない。清隆さんがいない場でのことだったし、私からは何も話せていなかったから……」
「そう……」
「でも、清隆さんはきっと何も知らされていなかったと思う。清隆さんはいつも私のことを大切にしてくれていたから。私がきちんと相談していれば、こんなことにはならなかったかもしれない。私が話していなかったせいで……」
「姉さん。絶対に姉さんは悪くないから、自分を追い込まないで?」

 誠一郎の優しい言葉に「ありがとう」と返す。そして、清隆も同じだったなと思い返した。雅がネガティブな思考になれば、いつも雅を諭してくれた。雅の思いをいつだってすくい上げてくれた。そんな清隆が雅を追い出すはずないとやはりそう思える。

 雅はその気持ちを肯定したくて、清隆が今日のことを把握していなかったと思うもう一つの理由について話しはじめた。
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