愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 そうして誠一郎の家での暮らしが始まったが、特に何か問題が起こることもなく一日、一日と時は過ぎていく。

 その間、父からの着信は何度かあったけれど、それに出てしまえば、雅は自分を正しく制御できる自信がなかったから、無視を貫いた。


 そして、一週間の時が経ち、ここでの生活にも慣れてきた頃、初めてこの家への訪問者が現れた。恐る恐るインターホンのモニターを確認してみれば、宅配業者と思われる男性が一人立っている。誠一郎には誰が来ても出なくていいと言われているから、雅は居留守を決め込む。

 住人がいなければ、不在票を入れてすぐに帰ってくれるだろうと、ただじっと息をひそめていれば、突然ガチャリと鍵の開く音がする。そのままドアが開いていき、ドアガードによってそれが阻まれる。

 明らかに招かれざる客の仕業だとわかり、雅は慌てて二階へ上って身をひそめた。

 ドアガードがかかっているから、侵入されることはない。このままここにいれば大丈夫だと、震える体を抱きしめながら息をひそめていれば、雅はいつの間にやら見知らぬ男性二人に取り囲まれていた。
< 146 / 177 >

この作品をシェア

pagetop