愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
『はい』
『すみません。姉がいなくなりました』
『なっ!? どういうことだ!?』
『父の機嫌がやけによかったので、不安に思って自宅へ戻ったら、姉の姿がなくなっていました……すみません』
『……わかった。すぐに探す。君も心当たりを探してくれ』
『はい』

 もうあと一歩だったというのに。どうしてこう雅を苦しめることばかり起こるのだろうか。清隆は自身の膝を強く叩いて一度怒りを吐き出すと、すぐに冷静さを取り戻して、鳴海へと向き直った。

「雅がいなくなった」
「っ!? 本日の予定は調整しておきます。すぐに奥様を探しにいかれてください」
「ああ、わかっている」

 とにかく考えられるところを探そうと急いでデスクを離れれば、そのタイミングでノックと共に父が姿を現した。

「滝田から緊急の連絡が来た」

 鳴海と顔を見合わせる。このタイミングでのそれは雅が消失したことと関係しているだろう。そして、それを肯定するように父が続く言葉を告げる。

「雅さんが危ない。行くぞ」

 清隆は大きく頷くと父と共に急いで会社を出た。

 父と目的の場所へ向かう中、どうか無事であってくれと清隆は必死に祈りを捧げていた。
< 148 / 177 >

この作品をシェア

pagetop