愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 その部屋にはキングサイズのベッドが一つとその両脇にベッドサイドチェストとテーブルランプがあるのみで他には何もない。寝ることだけを目的としたその部屋に嫌でも緊張してしまう。

 雅はベッドに腰かけると、どうにか心を落ち着けようと、清隆が来るまでの間、ひたすら瞑想を続けた。ただただ自身の呼吸にだけ集中し、他のことはすべて頭から追いやる。

 それからどのくらいの時間が経過したのだろうか。緊張で速まっていた鼓動がどうにか元に戻りはじめた頃、部屋のドアが開く音が聞こえてきた。清隆が入ってきたのだ。

「待たせた」
「いえ」

 清隆は雅のすぐ隣へ腰かけてくる。

「子供の話はしていなかったから、初めに言っておこう」

 その前置きに、ああやはりこの人も跡継ぎがいると考えているのだなと雅は最近の考えを改めた。

 雅が黙って頷くと清隆はすぐに子供の話とやらを口にしはじめた。
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