愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
雅との結婚話は、清隆にとって摩訶不思議なものであった。何しろその提案をしてきたのが、清隆の父だったからだ。
今から約二年近く前。父から大事な話があると呼びだされ、仕事のことだと思って父のもとを訪ねてみれば、突然結婚の話を告げられたのだ。
「清隆。お前に結婚の話がある。相手は笹崎紡績のご令嬢だ。年はもうすぐ二十四。今は家事手伝いをしながら、社会勉強として笹崎紡績の事務に関わっているそうだ」
父は一枚の写真を見せてくるが、清隆はそれには目もくれなかった。
「どういう風の吹き回しですか? こういうことは好まないと思っていました」
父は母と政略結婚をしており、清隆が物心ついた頃には二人の夫婦仲は冷え切っていた。父は祖父から言われてしかたなく母との結婚を受け入れていたようで、事あるごとに政略結婚などするものではないと口にしていた。人の繋がりを重視する祖父とは異なり、父は実力だけを重んじる人なのだ。
だから、そんな父が政略結婚の話を清隆に持ってくるなど俄には信じられなかった。何かの冗談かとすら思った。
「別に、私がどうこうしたいわけではない。ただ、この話が持ち上がったから、一応お前の意見も聞いておこうと思ったまでだ。受け入れても断ってもどちらでもいい」
「そうですか。少し考えさせてください」
清隆とて政略結婚など望んでいないが、その場で断ることはしなかった。それは打算的な考えによるものだった。
今から約二年近く前。父から大事な話があると呼びだされ、仕事のことだと思って父のもとを訪ねてみれば、突然結婚の話を告げられたのだ。
「清隆。お前に結婚の話がある。相手は笹崎紡績のご令嬢だ。年はもうすぐ二十四。今は家事手伝いをしながら、社会勉強として笹崎紡績の事務に関わっているそうだ」
父は一枚の写真を見せてくるが、清隆はそれには目もくれなかった。
「どういう風の吹き回しですか? こういうことは好まないと思っていました」
父は母と政略結婚をしており、清隆が物心ついた頃には二人の夫婦仲は冷え切っていた。父は祖父から言われてしかたなく母との結婚を受け入れていたようで、事あるごとに政略結婚などするものではないと口にしていた。人の繋がりを重視する祖父とは異なり、父は実力だけを重んじる人なのだ。
だから、そんな父が政略結婚の話を清隆に持ってくるなど俄には信じられなかった。何かの冗談かとすら思った。
「別に、私がどうこうしたいわけではない。ただ、この話が持ち上がったから、一応お前の意見も聞いておこうと思ったまでだ。受け入れても断ってもどちらでもいい」
「そうですか。少し考えさせてください」
清隆とて政略結婚など望んでいないが、その場で断ることはしなかった。それは打算的な考えによるものだった。