愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
　その後、家に一人きりになれば、雅はこの先を想像してまた少しだけ怖くなった。もしかしたら夜になって二人きりになれば、何か言われるかもしれないという考えが頭をよぎるのだ。

　けれど、清隆は夜になっても、翌日になっても、あの出来事について触れてこない。あまりにも触れてこないから、雅は戸惑いを覚えたけれど、同居当初と少しも変わらない清隆の態度に次第に怖がることをやめた。

　けれど、その一方で雅は強い焦りを抱くようになった。あの日以来、清隆は雅を一切誘ってこないのだ。

　最近の清隆の帰宅時間は以前よりも早くなっており、休日には家で過ごすことも多くなっている。だから、その時間はいくらでもあるはずなのだけれど、二人はあれから一度も寝室へ足を踏み入れていない。

　清隆にもう見限られてしまったのではないか。あの失態が原因で、妻失格の烙印を押されてしまったのではないか。そんな考えにとらわれて、雅は日に日に不安が強くなっていく。

　もう二度とその役目を果たすチャンスを与えられないかもしれないと思うと、雅はこの先のことが不安でたまらないのだ。たとえ、清隆が雅につらく当たらなかったとしても、雅が役目を果たせなかったとわかれば、父からのきつい仕打ちが待っていることは確実なのだから。
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