愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「少しいいか?」
清隆が珍しく雅に声をかけてきたのは、たまたま夕飯のタイミングが重なり、二人して食卓に着いたときだった。
「はい」
「近々オープン予定の商業施設のレセプションパーティーへ出席することになった。君にも妻として同伴してもらいたい」
同伴話に雅は驚く。そういう役目については事前に清隆から話を受けていたし、清隆が言ったのはごく当たり前のことなのだろうが、てっきり妻としてはもう何も求められていないと思っていた。雅が妻として清隆の隣に立つことなんてもう決してないのではないかと思っていたから、清隆の言葉は雅を驚かせるのに十分だったのだ。
けれど、雅はその驚きは表には出さずに、ただ「承知しました」と答えた。雅はいつだってその返答しか持ち合わせていないのだ。
「明日にでも鳴海を寄こすから、詳しいことは彼に聞いてくれ」
「わかりました」
その後は一切会話はなかった。雅は突然のことに軽い混乱状態であったが、妻としての役割を求めてくれるのならば、今度こそは完璧にこなさなければと、心の中で自分に厳しく言い聞かせていた。
清隆が珍しく雅に声をかけてきたのは、たまたま夕飯のタイミングが重なり、二人して食卓に着いたときだった。
「はい」
「近々オープン予定の商業施設のレセプションパーティーへ出席することになった。君にも妻として同伴してもらいたい」
同伴話に雅は驚く。そういう役目については事前に清隆から話を受けていたし、清隆が言ったのはごく当たり前のことなのだろうが、てっきり妻としてはもう何も求められていないと思っていた。雅が妻として清隆の隣に立つことなんてもう決してないのではないかと思っていたから、清隆の言葉は雅を驚かせるのに十分だったのだ。
けれど、雅はその驚きは表には出さずに、ただ「承知しました」と答えた。雅はいつだってその返答しか持ち合わせていないのだ。
「明日にでも鳴海を寄こすから、詳しいことは彼に聞いてくれ」
「わかりました」
その後は一切会話はなかった。雅は突然のことに軽い混乱状態であったが、妻としての役割を求めてくれるのならば、今度こそは完璧にこなさなければと、心の中で自分に厳しく言い聞かせていた。