愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***

 清隆は滲み出る笑みを抑えるように、自身の口を手で覆いながら、満足から来るため息を大きくついた。

「あれは、いい妻、だな」

 思わずその言葉が漏れ出る。

 これまで見てきた雅の姿というのは、大人しく控えめで、夫や年長者の言葉に黙って従い、自分の考えなど少しも持っていないような、まるでよく作られた人形のようであった。

 あの激しい怯えを見せたときだけは違ったけれど、いつも完璧な微笑みを浮かべていて、だからこそ雅からは何の感情も感じられなかった。

 きっと今日のパーティーでも雅は人形のようにきれいな笑みを浮かべて、清隆の横に立っているのだろうとそう思っていた。実際、それで構わなかった。彼女に特別なことは求めていない。ただ、清隆の邪魔にならなければそれでよかったのだ。
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