愛なき政略結婚は愛のはじまりでした

　勢津子には五歳差の『かすみ』という名の妹がおり、二人は小さな頃からとても仲がよかったらしい。かすみは自身の名前の混じっているカスミソウを大層好いており、よくカスミソウを含んだ花束を買っては飾っていたそうだ。勢津子もよくカスミソウを贈っていたという。

　しかし、そんなかすみは二十代前半にして大病を患い、数年の闘病の末、二十四の歳になくなってしまったらしい。

　勢津子にとってカスミソウとは、今は亡き愛する妹を象徴する花だったのだ。

　かすみが亡くなったばかりの頃は、カスミソウを見ても切ない気持ちになっていたそうだが、時が経つにつれ、カスミソウはかすみとの想い出を蘇らせてくれる大事なものへと変わっていったらしい。