愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 それを清隆にすべて話せば、清隆は納得したというように頷く。

「なるほど。あのデザインに特別な意味があったのか。でも、どうして君はそれを知っていたんだ? 結婚式でしか会ったことなかっただろう?」
「結婚式で奥様が、飾られていたカスミソウをとても優しい表情で見つめていらっしゃったんです。きっと奥様にとって特別なお花なのだろうと思いました」

 式場の装花の中で、なぜかカスミソウだけをやたらと眺めていたから、自然と目に留まったのだ。勢津子はそれはそれは柔らかい笑みを浮かべていて、余程カスミソウを気に入っているのだと感じていた。

「君はそんな些細なことまでよく覚えているんだな」
「奥様の表情がとても印象的でしたので」
「そうか。とても大切な想い出があるんだろうな」
「はい」

 そこまで話すと清隆は雅のほうへと体を向け、真っ直ぐに雅へ視線を寄こしてきた。
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