愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「雅。今回のことはすべて君のおかげだ。君に感謝の贈り物をしたい」

 清隆の申し出に雅は慌てて首を振る。カスミソウのことがわかったのは偶然であって、こんな結果になることを予測していたわけではない。それに、雅はただ勢津子に喜んでほしかっただけなのだ。それを感謝の贈り物だなんて大袈裟である。

「いえ、私は奥様に喜んでいただけたらと思っただけですから」
「それでも、君のおかげで私はいい話を持ち帰ることができたんだ。だから、これを受け取ってほしい」
「え?」

 清隆は突然何かのケースを取りだしたかと思うと、それを開けて雅へ見せてくる。

 その中身を見てみれば、そこには薄青色の宝石がはめ込まれたネックレスが入っていた。その色を見てすぐにピンとくる。これは雅の誕生石であるアクアマリンだろう。それが本当に雅のために用意したものなのだとわかる。

 けれど、今日の出来事への贈り物だとしたら、清隆はいつこれを用意したのだろうか。そんな疑問を抱いていれば、「帰りに寄ったところで選んできた」と言われて、すぐに謎が解けた。

 帰宅途中に清隆が寄りたいところがあると言って、一度車を降りてどこかへと行ってしまった時間があったのだ。雅は車の中で待っていたから気づかなかったが、そのタイミングで購入していたらしい。

 その清隆の行動力にも驚くが、本当に雅へ贈り物をしようとしてくれていることに何よりも驚く。
< 51 / 177 >

この作品をシェア

pagetop