愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
玄一郎は雅のことをもっと前から知っていたという。というより、雅が有名だったのだ。清隆はまったく知らなかったが、笹崎紡績の令嬢は淑女の鑑であるとして、多方面から彼女との婚姻を望む声が上がっていたらしい。
清隆との結婚話が持ち上がる直前には、とある資産家へ嫁ぐのだと噂されていたという。それも自身の不貞によって独り身になった五十代の男だというから笑えない。
そんな身売りのような話に、清隆は激しい憤りを感じたのだ。自分だって似たようなもののはずなのに、そんなことは棚に上げて、雅を蔑ろにするのは許せないと思ってしまった。
本当にどの口が言うのだと思うが、雅は大切にされて然るべき人だと思ったのだ。自分もそうしたいと思った。
玄一郎から雅を幸せにしてやりなさいと言われて、そんなことは言われなくてもすると思ってしまったくらいだ。そして、同時に彼女を手放したくないとも思った。
だからこそ、雅のすべてをものにしたくなってしまったのだ。彼女のすべてを手に入れて、自分のもとから離れないようにしたいとそう思ってしまった。
それがこの結果である。あまりにも短絡的な行動に、自分で自分に嫌気がさす。
清隆はどうしようもない自分に対して、もう一度深いため息をこぼした。
(もっと彼女に寄り添わなければ……)
清隆との結婚話が持ち上がる直前には、とある資産家へ嫁ぐのだと噂されていたという。それも自身の不貞によって独り身になった五十代の男だというから笑えない。
そんな身売りのような話に、清隆は激しい憤りを感じたのだ。自分だって似たようなもののはずなのに、そんなことは棚に上げて、雅を蔑ろにするのは許せないと思ってしまった。
本当にどの口が言うのだと思うが、雅は大切にされて然るべき人だと思ったのだ。自分もそうしたいと思った。
玄一郎から雅を幸せにしてやりなさいと言われて、そんなことは言われなくてもすると思ってしまったくらいだ。そして、同時に彼女を手放したくないとも思った。
だからこそ、雅のすべてをものにしたくなってしまったのだ。彼女のすべてを手に入れて、自分のもとから離れないようにしたいとそう思ってしまった。
それがこの結果である。あまりにも短絡的な行動に、自分で自分に嫌気がさす。
清隆はどうしようもない自分に対して、もう一度深いため息をこぼした。
(もっと彼女に寄り添わなければ……)