愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***
「鳴海。お前、雅にあれこれと資料を渡しているだろう?」
清隆は出勤するなり、鳴海にそう問うた。それを確認せずにはいられなかったのだ。
「はい。業界のことを知っておきたいと仰っていたので、私のほうで見繕ってお渡しいたしました。もちろん外に漏れても問題ないようなものをお渡ししています」
「それは別に疑っていない。だが、お前はいったいどれだけの量を渡しているんだ? おそらく雅は家にいる間、勉強しかしていない」
清隆がそう言えば、鳴海は少し驚いた表情をしてみせ、でもすぐに納得したように軽く頷いている。
「そういうことでしたか。数ヶ月くらいをかけてゆっくり目を通されると思ってお渡ししたのですが、大体一週間程度で次をお求めになっています」
それを聞いて清隆は思わず頭を抱えた。やはり清隆の推測は間違っていないようだ。雅は勉強ばかりしているのだろう。
「はあ。それで言われるがまま用意していたんだな?」
「はい」
「これからは少し控えてくれ」
「承知いたしました」
鳴海からは物言いたげな視線がやってくるが、清隆はそれには反応しなかった。まったく気にしていなかった妻のことを突然気にかけだしたから、清隆の心境の変化を知りたがっているのだろう。
鳴海とは友人関係でもあるから、プライベートの話も普通にするが、さすがにこれから業務開始という今の時間には何も言わなかった。あとから何か言われるかもしれないが、それはそのときに考えればいい。
鳴海は用を済ませるとすぐに部屋を退室していったから、一人になった清隆は誰に聞かれるでもないため息を大げさについた。
「鳴海。お前、雅にあれこれと資料を渡しているだろう?」
清隆は出勤するなり、鳴海にそう問うた。それを確認せずにはいられなかったのだ。
「はい。業界のことを知っておきたいと仰っていたので、私のほうで見繕ってお渡しいたしました。もちろん外に漏れても問題ないようなものをお渡ししています」
「それは別に疑っていない。だが、お前はいったいどれだけの量を渡しているんだ? おそらく雅は家にいる間、勉強しかしていない」
清隆がそう言えば、鳴海は少し驚いた表情をしてみせ、でもすぐに納得したように軽く頷いている。
「そういうことでしたか。数ヶ月くらいをかけてゆっくり目を通されると思ってお渡ししたのですが、大体一週間程度で次をお求めになっています」
それを聞いて清隆は思わず頭を抱えた。やはり清隆の推測は間違っていないようだ。雅は勉強ばかりしているのだろう。
「はあ。それで言われるがまま用意していたんだな?」
「はい」
「これからは少し控えてくれ」
「承知いたしました」
鳴海からは物言いたげな視線がやってくるが、清隆はそれには反応しなかった。まったく気にしていなかった妻のことを突然気にかけだしたから、清隆の心境の変化を知りたがっているのだろう。
鳴海とは友人関係でもあるから、プライベートの話も普通にするが、さすがにこれから業務開始という今の時間には何も言わなかった。あとから何か言われるかもしれないが、それはそのときに考えればいい。
鳴海は用を済ませるとすぐに部屋を退室していったから、一人になった清隆は誰に聞かれるでもないため息を大げさについた。