愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
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 清隆から趣味を楽しむよう言われてからというもの、雅はそわそわと落ち着かない日々を過ごしている。

 清隆にああまで言われてはそれをしないほうがかえって失礼なことをしているような気になる。けれど、道具はすべて置いてきてしまったから、今さらそれをしようにもできないのだ。

 実家に顔を出せば父が黙ってはいないだろうし、そもそもそれがまだ残っているとも限らない。

 新しく買うという手もあるだろうが、それをするには清隆のお金に頼ることになる。

 実家にいた頃は必要なものだけ買い与えられ、雅が自由にできるお金はほとんどなかった。もちろん結婚するにあたって、持っていけるようなお金もなかったから、今は清隆のお金に頼らざるを得ない。

 清隆からはカードを渡されていて、それで買い物をしていいと言われてはいるが、自分の趣味のために使うのはさすがに憚られるのだ。

 そうして悩ましい日々を過ごす中、この問題を解決してくれたのは意外な人物であった。
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