愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 それからの雅は清隆との約束を果たすように、少しずつ自分の時間を持つようになった。実家にいた頃から自分の時間なんてほとんどなかったから、いきなり好きに過ごすというのは難しく、毎日一時間程度を趣味の時間にしている。

 休日は清隆とリビングで共に過ごすのが当たり前になり、雅は少しずつではあるが、彼の前でもあまり気負わずに過ごせるようになっていった。

 そうやって少しずつ少しずつ雅は新しい暮らし方に慣れはじめた。

 清隆との間にある空気も以前よりずっとずっと柔らかくなった。

 休日に隣で過ごす彼はいつも優しい表情をしている。時折雅に触れては微笑んでくるから、雅はそのたびに落ち着かない気になるが、それもまったく嫌ではなかった。

 たいていは雅の頬や頭に軽く触れてすぐに離れていくから、雅は物足りなさを感じるようにまでなっていた。もっと清隆に触れてもらいたいという気持ちが芽生えてしまって、いつももどかしい思いをしている。

 そんな自分がものすごくはしたなく感じられて、最近は意識的に自分の気持ちを律しようとしているくらいだ。

 清隆とリビングで過ごすひと時はあまりにも心地よくて、もう近頃は平日にもリビングで過ごすようになってしまった。ソファーのいつもの場所に座っていると清隆を感じられるような気がして、ついついリビングに足が向いてしまうのだ。
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