愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 二度目の寝室は相変わらずベッドの存在感が大きくて落ち着かない。でも、一度目にここを訪れたときとは雅の心持ちは随分と変わっていた。清隆と先へ進むことを望んでいる自分がいる。

「本当にいいのか?」

 心配そうに問いかける清隆に雅ははっきりと答えた。

「はい。お願いします」
「わかった」

 すぐに口づけがやってくる。数度繰り返されるそれを受け止めていれば、唇が触れ合ったままゆっくりと体を押し倒されていく。いよいよ先に進めるのだという期待に胸が湧く。

 唇が離れ、ゆっくりと目を開ければ、すぐ近くに清隆の顔がある。雅を上から見つめている。

 清隆のことはもうちっとも怖くないはずなのに、そうやって覗き込まれるとまた体が勝手に震えだす。唇を強く噛んでどうにかそれを抑え込もうとしたら、グッと勢いよく体を引き起こされた。

 すぐに起こしてくれたから、今回はまだあまり取り乱さずに済んでいる。けれど、清隆は困った表情を浮かべながら、雅が一番望まない言葉を放った。
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