愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「雅。ここへ」

 清隆は自分の腿を叩いて示してくる。そこに乗れと言っているのだろう。

 夫の上に乗るだなんて、そんな無礼なことはできないと雅が戸惑っていれば、清隆は雅の腕をグッと引いてくる。

「大丈夫だ。乗ってくれ」

 清隆はにこにことしていて、まったく引きそうにない。雅はしかたなく、清隆の体を跨ぐようにして、彼の足の上へその身を下ろした。

 その体勢のまま再び口づけが始まる。それが始まってしまえば、体勢のことを気にする余裕もなくなって、ただただ清隆が与える口づけに応えるばかり。

 清隆はその後もこの恥ずかしい体勢を崩すことなく進めていく。誰にも触れられたことのない部位を清隆の手が触れていく。恥ずかしくてたまらないけれど、清隆がちゃんと進めてくれていることに深く安堵する。

 さすがに、互いに何も纏わぬ状態で清隆に跨っていては、顔が沸騰しそうなほどの羞恥心に襲われるが、それでもやめてほしいとは思わない。
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