愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「あなたはそれを聞いてどうなさりたいんですか? 姉のためにならないことは私は答えませんよ」
「雅を怖がらせたくないんだ。そうならないよう気をつけているが、原因がわからないとその対処も難しい。だから、もしも君が知っていることがあれば教えてくれないだろうか?」

 清隆が懇願するように窺えば、誠一郎はようやく警戒を解いて、こちらに寄り添いを見せてくれた。

「……わかりました。ただし、今からする話は決して他の誰にもしないでください。姉も誰にも知られたくないでしょうから。約束を破ったら私は容赦しませんよ」
「わかった。約束しよう」

 そうして誠一郎から語られたのは、耳を塞ぎたくなるほどの惨たらしい話だった。雅の父が躾と称してひどく雅を痛めつけていたのだと教えられた。

 雅に覆いかぶさるような体勢が、そのときのことを彷彿とさせていたのだとわかって、清隆は過去の自分の行動を激しく悔いた。
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