愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
誠一郎を見送って部屋に戻ると清隆は大きなため息をこぼした。誠一郎から聞いた話が蘇ってきて、腹が立ってしまうのだ。
「随分イライラとしているな」
休憩の時間だからか、あるいは、清隆の状態が普通でないからか、鳴海がプライベートの口調で話しかけてきた。
「ああ、最悪な話を聞いてしまったからな。本当に腹立たしい。自分にも腹が立つ」
雅の父の所業に憤るだけでなく、悲惨な目に合ってきた雅に対して、希望も何もない言葉を浴びせかけていた自分にも激しく憤っている。どうして最初から向き合おうとしなかったのかと後悔が募る。
今さらそんなことを思ってもどうにもならないのだが、清隆は激しい感情のやり場をなくしていて、それを表に出さずにいられないのだ。
鳴海はそんな清隆を見ておかしそうに笑いだす。
「ははっ。お前、本当に変わったな。誰かのためにそんなふうに感情をあらわにするなんて、以前のお前では考えられなかった。いい奥さんをもらったな」
「ああ。私にはもったいないくらいのな」
清隆がそうやって即答すれば、鳴海は片眉を上げて、楽しそうに笑っている。
「精一杯大事にしてやれよ」
「わかってる。ああ、ちょうどいい。スケジュール調整を頼めるか? 雅を旅行に連れていくから、どこかで連休を取れるようにしてくれ」
鳴海は清隆のその言葉に「承知いたしました」と秘書モードに切り替えて返答してきた。
「ありがとう。頼んだ。それとすまないが、しばらくは一人にしてくれ」
「はい。ですが、その前に少しだけ」
「例の件か?」
「はい。どうやらこの二人と頻繁に会っているようです」
鳴海から二枚の写真を手渡される。二枚ともに清隆の叔父であるエンリッチの常務取締役の姿が写っている。そして、その横には清隆にも関係のある人物がそれぞれの写真に写っていた。
「っ。なぜこの二人と?」
「まだわかりません。ですが、よからぬことを企んでいるのは確かかと。十分すぎるくらいに注意を払っておいたほうがよいかもしれません」
「わかった。気をつける」
清隆が神妙な顔をして頷けば、鳴海は軽く礼をしてから部屋を退室していった。
清隆は頭を抱えたくなる複数の事柄に、またも大きなため息をついていた。
「随分イライラとしているな」
休憩の時間だからか、あるいは、清隆の状態が普通でないからか、鳴海がプライベートの口調で話しかけてきた。
「ああ、最悪な話を聞いてしまったからな。本当に腹立たしい。自分にも腹が立つ」
雅の父の所業に憤るだけでなく、悲惨な目に合ってきた雅に対して、希望も何もない言葉を浴びせかけていた自分にも激しく憤っている。どうして最初から向き合おうとしなかったのかと後悔が募る。
今さらそんなことを思ってもどうにもならないのだが、清隆は激しい感情のやり場をなくしていて、それを表に出さずにいられないのだ。
鳴海はそんな清隆を見ておかしそうに笑いだす。
「ははっ。お前、本当に変わったな。誰かのためにそんなふうに感情をあらわにするなんて、以前のお前では考えられなかった。いい奥さんをもらったな」
「ああ。私にはもったいないくらいのな」
清隆がそうやって即答すれば、鳴海は片眉を上げて、楽しそうに笑っている。
「精一杯大事にしてやれよ」
「わかってる。ああ、ちょうどいい。スケジュール調整を頼めるか? 雅を旅行に連れていくから、どこかで連休を取れるようにしてくれ」
鳴海は清隆のその言葉に「承知いたしました」と秘書モードに切り替えて返答してきた。
「ありがとう。頼んだ。それとすまないが、しばらくは一人にしてくれ」
「はい。ですが、その前に少しだけ」
「例の件か?」
「はい。どうやらこの二人と頻繁に会っているようです」
鳴海から二枚の写真を手渡される。二枚ともに清隆の叔父であるエンリッチの常務取締役の姿が写っている。そして、その横には清隆にも関係のある人物がそれぞれの写真に写っていた。
「っ。なぜこの二人と?」
「まだわかりません。ですが、よからぬことを企んでいるのは確かかと。十分すぎるくらいに注意を払っておいたほうがよいかもしれません」
「わかった。気をつける」
清隆が神妙な顔をして頷けば、鳴海は軽く礼をしてから部屋を退室していった。
清隆は頭を抱えたくなる複数の事柄に、またも大きなため息をついていた。