愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 今、雅と清隆が立っているこの場所は、加々美家が所有する別荘からほど近い場所にあるビーチだ。

 雅と清隆は昨日から別荘を訪れており、三泊四日の日程をこの地で過ごすことになっている。

 雅が、清隆から別荘へ行くと聞かされたのは今から一ヶ月くらい前のことで、最初にその話を聞いたときは、清隆一人が別荘へ行くものだと思っていた。一人で羽を伸ばしたいのだろうと。

 けれど、清隆は二人でゆっくり過ごせるからと雅も行く前提で話を進めていて、雅はとても混乱したのだ。自分も一緒に行くだなんて本当に考えもつかなかった。

 雅がいてはくつろげないだろうと、自分は留守番がいいのではないかと提案してみれば、清隆は雅と過ごすために取った休暇だからと言って、雅の提案を跳ねのけた。

 雅と過ごすためだなんて、もったいなさすぎるその話に、雅はもう恐縮しきりであったが、嬉しくはないかと訊かれれば、答えは迷いなく『嬉しい』であった。

 結局は雅も清隆の話に同意をして、今回の旅が決定したのである。
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