愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
　再び二人きりのドライブが始まる。隣には運転をする清隆の姿があり、車窓からはどこまでも広がる海が見える。

　なんだか最上級の贅沢を味わっているようで少し落ち着かない。それでも清隆と二人きりのこの空間はとても心地のいいもので、雅はこれが永遠に続けばいいと思うくらいに心を弾ませていた。


　そのまま三十分くらい海岸沿いを走り、二人が乗る車は西洋風の建物へと吸い込まれていった。海の景色と相まって、まるで別世界にでも来ているかのような気分になる。

　清隆のエスコートに従い、車から降りて建物へと向かえば、スタッフと思しき人に出迎えられた。

　清隆は特に何の説明もなしにここへとやってきたから、雅にはここが何かわからない。レストランか何かに見えるが、先程食事を終えたばかりでレストランに入るのもおかしいだろう。

　雅はこの場所の正体を頭の中で考えながらも、スタッフの案内に従い、清隆に寄り添って歩いていく。そうして雅が連れてこられたのはとある扉の前だった。

　スタッフがその扉を開く。答え合わせをしようと扉の先を見つめていれば、雅の目に飛び込んできたのは、見間違いようのない、それは見事なチャペルであった。

　雅が思わず「え？」と声を漏らせば、清隆は優しく微笑んでチャペル内部へと雅を誘導していく。そして、祭壇までたどり着けば、その場には雅と清隆の二人だけが残された。
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