一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 そう父親ははぐらかしたが、成哉の中では医者になりたいという気持ちが芽吹いてきていたのだった。

(パパみたいなお医者さんになりたい)

 成哉は幼心にそう考えていた。そして退院日。看護師から花束や手紙を受け取った成哉は彼女達にこう宣言した。

「ぼく、パパみたいなお医者さんになりたい!」

 その宣言を聞いた看護師達は本気で受け止めていた者もいれば、冗談半分に受け止めていた者もおりまさに半々の状態だった。このうち彼が本当に医者になると思っていた看護師はどれくらいいただろうか。
 母親に連れられて病院を出た成哉は帰り際、ベリが丘の街に立ち寄りそこのレストランで昼食を食べた。昼食は彼が好きなハンバーグがメインのお子様ランチ。他にも丸く形成されたご飯に付け合わせでフライドポテトにナゲットに茹でブロッコリーやコーン等が白い1つのプレートに入っていた。成哉はそこでハンバーグセットを注文した母親と昼食を食べた。

「成哉はお医者さんになりたいの?」

 昼食を食べている時、母親からそう聞かれた成哉はうんと首を縦に大きく振った。

「だってかっこいいもん。それに痛いの飛んでくなんてすごい!」
「そっかあ。じゃあ勉強頑張らないと」
「勉強したらお医者さんになれるの?」
「うん。成哉ならちゃんと勉強したらなれるよ」

 母親は笑顔でそう成哉に告げたのだった。
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