一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 その日から成哉は勉強に真面目に取り組むようになった。母親と父親からはコツコツと毎日勉強して、苦手な部分や自分の得意な部分をしっかりと把握すれば大丈夫だと言われたので成哉はその言葉を信じたのだった。小学校入学時からは個別教室の塾にも通い、自分のペースで勉強に取り組んでいたのだった。
 勿論、個別教室の塾以外にも彼は習い事をやっていた。それは水泳。父親からはスタミナをつける為にやった方が良いと勧められたのだ。

「スタミナつけなきゃいけないの?」
「ああ、手術は体力が必要なんだ。ずっと立ちっぱなしで長い時間向き合わなきゃいけないから。途中でばててしまったら代わりはいないからね」
「そっか。じゃあ水泳頑張る」

 最初スイミングスクールに通い始めた頃の成哉は5メートル泳ぐのがやっとだったが、最終的には距離を伸ばし遠泳も出来るようになった。目標距離が達成される度にご褒美をくれるシステムがスイミングスクールにはあった事も幸いして成哉はめきめきと泳ぎを上達させていった。なので小学校1年の夏の水泳の授業ではクラスで一番泳げる生徒と言う立ち位置だったし、成績も学年でトップクラスだった。

「藤堂くんすごいね!」
「どうやったらそんなに賢くなれるの?」
「教えて教えて!」

 彼の周りには常に人がいた。勉強の事で教えを請いに来る者が大半だったが成哉は彼らへ余す事なく勉強を教えてあげていた。
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