一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「その時は自分に正直になれ。今はそういうのは考えられないなら断ればいいんだ。今はそういうの考えられないってな」
「うん、わかった」

 その2日後。成哉は放課後別のクラスの女子3人に体育館裏へと呼び出された。

「藤堂くん、手紙読んでくれた?」
「もしかしてピンクの花柄のやつであってる?」
「うんそう。で……付き合ってくれるかな?」
「ごめんなさい。今はそういうの考えられないと言うか……本当にごめんなさい」

 成哉は父親の言うとおりに正直に理由を言い、頭を下げた。女子3人はフラれるのは予想していてもそこまで丁寧に謝られるとは思っていなかったのか、困惑しながらそこまで謝らなくていいよと告げる。

「そっか。こっちこそごめんね」

 こうして3人はそそくさとその場から離れていった。その後彼女達は成哉と話す事はあれど、彼と深く関わりあう事は無かったのだった。
 その後も成哉へ告白する女子は現れ続けたが、成哉は断り続けていた。断る時は誠実に、正直に伝えると言うのを成哉は念頭に入れて対応していたおかげかトラブルは無かった。
 だが、愛海が言うように彼には彼女がいるという噂が独り歩きしていたのも事実である。

「藤堂くんには彼女がいるらしい」
「彼女がいるから、告白しても断られる」

 そんな噂が成哉の知らぬ間に女子達の間で流れていたのである。

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