一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 成哉が購入したのは、照り焼きチキンのサンドイッチに、ほうれん草とベーコンのキッシュが一切れだった。

「堀田、午後も頑張れよ!」
「う、うん……」

 颯爽と去っていく成哉。彼の背中は爽やかでかっこよかった。

(私とは違う世界の人間のようだ)

 お昼休憩に入っても、同僚らからの追及は止まない。

「藤堂先生とはほんとに知り合いだけなの?」
「ほんとだって! てか、ここで彼が働いているの昨日、知ったというか」
「え」
「ほんとほんと」
「堀田さん、まじ?」

 まるで、知らないのが異常とでも言うような、そんな目線を私は受ける。

「堀田さん、藤堂先生てやばいんだよ? 院長の息子さんで、すごい腕のいい外科医師なんだよ?!」
「そんなに?!」
「おまけにイケメンで、看護師含めてスタッフからはすごい人気なんだから! 患者からも慕われてるし!」
「堀田さんこの雑誌見てみる?」

 同僚から差し出されたのは、医療ジャンルの雑誌。その拍子をスーツ姿の成哉が飾っている。
 髪も綺麗にセットし、しっかりとメイクされたのも分かるその表紙からは、どこか一流アイドル感が漂っている。

(へえ~……アイドルみたい)

 表紙には「ゴッドハンドを目指して~若きドクターの挑戦~藤堂医師のインタビュー掲載」と大々的にあおり文も掲載されている。

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