一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜

最終話 それぞれの夢

「おはようございます。愛海さん」
「朝食でーーす。リハビリもさっそく始めて行きましょう」

 田中さんと松崎さんは今日も明るく元気な笑顔と声色で私の前に現れる。 
 朝食は丸い米粉パン2つに茹でキャベツのコールスローのサラダとスクランブルエッグ。本来は牛肉が付くのだが、私は牛乳を飲むとお腹を壊しやすいのでりんごジュースにしてもらっている。
 リハビリのおかげで手はほぼ問題なく動かせられる状態になった。お箸はまだ扱い慣れない感はほんの少しだけあるが使い込めれば以前と同じくらいにはなれるだろう。という理学療法士の判断だ。

「うん、美味しい!」

 スクランブルエッグはトロトロで、パンとの相性はとても良い。コールスロードレッシングのかかったキャベツのサラダもおかわりしたくなるくらいに美味しかった。
 なぜか朝から吐き気があったが、つわりと比べるとそこまで気になる程ではない気もする。

「ごちそうさまでした」

 食事が終わり身支度を済ませると、私は理学療法士の2人と共に車椅子である場所に向かう。
 そこはリハビリルーム。病院の2階にある施設でここでより負荷のかかったリハビリ及びトレーニングを行うのだ。

「おはようございます。愛海さん」

 青いマットレスの右手前付近で私を乗せた車椅子が止まると、私を出迎えてくれた人物がいた。
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