一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「田中さん!」

 リハビリルームに若い女性の看護師が入室し、田中さんの元に駆け寄る。

「愛海さんの診察なんですが……」
「分かりました。今トレーニングが終わったのですぐ行きます」

 どうも診察の時間らしい。私は理学療法士2人の力も借りながら這いつくばるようにして車椅子に乗る。その間に宇田さんは帰っていった。
 診察の結果は良好。来週にも退院出来るとの事だった。診察後、私は理学療法士の2人と共に特別室へと戻ると、机の上には書類があった。

「あ、これ……」

 それはベリが丘の役所から届いた健康診断の催促状だった。ずっと先延ばしかつ放置していたので早くしないとクーポンが切れてしまうと書いてある。

「健康診断の催促状ですか」
「そうなんです、放置したままだった……田中さんどうしたらいいですかね?」
「看護師さんに聞いてみます」

 田中さんは健康診断の催促状を持って、看護師からいるナースステーションに向かっていった。

(おめでたもあったし、ほったらかしのつけか……)

 しばらくして田中さんが部屋に戻って来る。看護師も一緒に部屋に入って来た。

「愛海さん。明日、しますか?」

 そう看護師はまるで何事も無かったかのように私へ問いかける。
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