一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 中学卒業後は互いに違う高校に進学したので、あの日に再会するまでは一度も会った事は無かった。
 だが、成哉への片思いの感情だけは胸の中でずっと引っかかっていたというか、燻り続けていたというか。そんな感じだった。

(今思えば、後悔もあったのかなあ)

 業務が終わり、いつものようにコンビニで夕食を買う。今日はいつもと違う場所のコンビニでちょっと栄養に気を付けて、サラダとサバの味噌煮のレトルトを買った。
 あとはご飯を温めたらいいだけだ。お味噌汁も作ってみようか。

「ただいまあ」

 誰もいないアパートの自宅に戻り、さっさと夕食を作る。この間にも成哉は仕事にあたっているのだろうか。

(また会って、したいなあって何考えてるんだか)

 レトルトのサバの味噌煮をレンジで温めて、余ったご飯もレンジで温める。味噌汁は豆腐とネギを入れたものを作ってみた。サラダをよそって夕食が完成する。

「いただきます」

 テレビをつけると、ベリが丘のホテルが映し出されていた。どうやらホテルのフレンチレストランで出される食事の特集のようだ。

「こんなの、食べてみたいなあ」

 いつかはこういう食事も食べてみたいが、いつになる事やら。
 自作の味噌汁は米麹の味噌が良い味を出していて我ながら美味しくできている。サバの味噌煮も骨が取り除かれていて食べやすくて味も程よく濃くて美味しい。

「ごちそうさまでした」

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