一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 それからベリが丘での仕事の日々は、何も変わらず続いていった。成哉とは時折彼が昼食を買いに来た時に会って、挨拶をするくらいで2人っきりではずっと会っていない。
 おそらくは向こうは手術が立て込んだりしていて忙しいのだろう。

(医者だし、仕方ないよね)

 それからずっと仕事を淡々とこなす日が続いていったが、なぜか私の体調が悪くなっていった。具体的には消化器症状。特に胃の辺りがおかしい。それに生理も遅れている気がする。

(異動もあったし、ストレスだろう)

 そう考え、我慢してはきたが、中々治らないうえに、時折何か食べ物の匂いを嗅ぐと胃の内容物を戻しそうになってしまう。

「大丈夫?」
「大丈夫。これくらいなんとも……」
「一度胃カメラでも受けてみたら? 胃潰瘍とかだったら大変だし」

 先輩や店長からも受診を勧められたので、私はとりあえず明日、仕事が休みの日にベリが丘のクリニックにて診察を受ける事に決めたのだった。
 仕事が終わってスマホでクリニックを検索し、予約を入れる。

(胃カメラ受けなきゃいけないかなあ)

 数年前に胃カメラは受けたのだが、口からカメラを入れた事であまりにも反射がひどく、ずっとえづいていたのが正直トラウマになっている。

「やだなあ……」
< 20 / 135 >

この作品をシェア

pagetop