一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「妊娠しているかもしれません」
「へ」

 開いた口が塞がらない。
 今私はクリニックにて、採血の結果を聞いている所だ。胃カメラを受ける前にとりあえず採血だけでもしておこうという話になり、採血した結果、妊娠していると言われたのだ。

「とりあえずうちの産婦人科にカルテ回しますので、そのままお待ちになってください」
「は、はい……」

 このクリニックは内科と産婦人科の2つ。今私が受診しているのが内科だ。
 診察室から出て廊下のソファに座って待つ。

「まじか……」
「堀田さん、どうぞ」
「は、はい」

 その後、検査をした結果やはり私は妊娠していた。

「お相手の方は今日は……」
「いません」
「ご結婚はされて」
「ないです」
(相手は藤堂くんしかありえないよなあ……)

 頭の中で今後どうすべきか、成哉にどう伝えるのか、ちゃんと産んで育てられるのか。私と成哉の両親を説得できるのか。その他養育費に諸々と一気に不安という不安がぼこぼこと湧き出て、私を飲み込もうとしている。

「堀田さん、今後どうするおつもりで?」

 そう聞かれても今すぐ答えなんか出るはずがない。

「今後……そうですね、えーーっと……」
「もし中絶されるなら、早めにご決断お願いします」

 その言葉が巨大な岩となって、私の頭に降りかかってきた。
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