一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「いらっしゃいませ」

 バーの若い男性の店員が爽やかかつシックな笑みで私達を出迎えてくれた。

「こちらのお席へどうぞ」

 店員に案内されたのは、窓側にあるテーブル席だった。ここからだとしっかり夜景が見える。その夜景と比べて、どこかネガティブになる私もいるのだが。

「じゃあ、頼んでいこうか。このカクテルとかどうよ?度数控えめだよ」
「じゃあ、飲んでみる」

 成哉に誘われ、薄いピンク色のカクテルを注文する。が、しかしお代を確認するのを忘れた。流石に奢ってもらうのは申し訳ない。
 私は財布を取り出して、中身の残高を慌てて確認する。

「こっちが奢るよ」
「でも、なんか申し訳ないよ」
「いやいや、こっちが奢るつもりだから。じゃんじゃん頼んでいって」

 結局彼に押し切られる形で、私はカクテルやフライドポテト、ピザをじゃんじゃん頼んでいった。彼もまたポテトにピザ等をがっつり注文していく。

「はあーー……」
「堀田結構飲むんだね」
「それほどでも」

 フライドポテトは程よく塩気が乗っていて美味しい。見た目は細長くて、某ファストフード店のフライドポテトとよく似ている気がする。 
 ピザもマルゲリータのピザで、トマトソースにバジルとモッツァレラチーズの相性がとても良い。

「ああーー……」

 カクテルが進み、なんだか頭がぽかぽかと温かくかつぼんやりとしてきたような、気がする。

「藤堂くんさあ」
「? どした?」
「彼女はいないの?」

 酔った勢いで、ついとんでもない事を聞いてしまった。だが、成哉からは動揺する素振りは見られない。

「いないよ。今はね」 
「今は?」
「大学入ってからは勉強でそれどころじゃ無かったし!」

 ハハッと笑う成哉を見た私の頭と心が揺らぐ。

(いいかな)
「あのさ」
「堀田?」
「……ホテルで飲み直さない?」

 私の胸の鼓動が、ドッドッドッと早まる。
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