一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 重厚感あふれる茶色の分厚い扉を開くと、玄関は思ったよりも広くて、開けていた。まるで洋館を少し小さくしたかのような造りだ。
 両サイドには2階へ通じる階段があるし、天井には大きなシャンデリアがぶら下がっている。

(うわ、漫画で見るようなお屋敷じゃん)
「ここ、なんか漫画っぽいというかファンタジーっぽいっしょ? 気に入ってるんだ」

 そうころころと笑う成哉に、確かにという言葉が漏れる。

「夏休みとか、ここに行くのすごい楽しみにしてたんだ。それに夜歩いてたら幽霊とか異世界に通じる穴とか出ないかなとか思ってたりもしてた」
「そうなんだ……! 幽霊いた?」
「いや、いなかった! 俺霊感全然ないから見えなかっただけかもしれないけど。堀田は幽霊大丈夫?」
「いや、ホラー系は全然無理。夜トイレ行くのめっちゃ怖いもん」
「ああ、でもわかるよそれ。真夜中に1人っきりでいる時にいきなりスマホ鳴ったらビビるもん」
「わかるわかる! めちゃわかる!」
「な!」

 思わず心からくすっと笑いがこぼれた。やっぱり、彼とこうした話をするのは単純に楽しい。気が楽になる。

「こういう話してると、気が楽になるかも」
「確かに、堀田の今の顔昨日よりかは元気そうに見える」
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