一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜

第3話 すれ違いと再会と決意

 成哉の声が途切れた。成哉の父親はまだ話を続ける。

「病院を存続させるのに、この婚約は必要なんだ。申し訳ないがお相手の方に関してはどうにかしてほしい」
「父さん……」
「判断はお前に任せる。子供を中絶するにしても認知して養育費だけちゃんと払うにしても、話だけはしっかりとしといてくれよ」
「……わかった」

 その後、成哉の父親は家から車で去っていった。窓からその車が見えたがおそらくタクシーだろう。一連の話を聞いていた私は成哉の元に駆け寄るかどうか悩んでいた。

(やっぱり、だめだ。ここは身を引くしかない)

 私は身を引き、この家から出る事を決めた。やっぱり成哉に迷惑をかけてしまっている。成哉が迷惑じゃなくても彼の親にとって迷惑と判断されれば致し方ない。
 この後はどうしようか、中絶するのも嫌なので1人で育てるしかない。両親になんて説明すれば良いかは分からないが、正直に伝えるしかない。仕事は辞めたくないので、産休育休は取ってできればすぐに復帰しないと。
 自分でも驚くぐらいに、頭がさえている。こんな状況だというのに。

(こういう時に限って、すごい考えがまとまってる)

 私は荷物を持って、部屋から出た。玄関には成哉が無言で立ち尽くしている。
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