一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「いっただきまーーす」

 私が最初に口に入れたのはフライドポテト。細長い鉛筆のようなシルエットをしたポテト1本を口に入れる。

「あっこれはいけそう」

 気持ち悪さがが起こらない。これならいくらでも食べられそうだ。それに塩気が癖になる。ハンバーガーも照り焼きソースの味が甘辛で、食欲を起こさせてくれる味わいだ。パティも柔らかい。

「ごちそうさまでした」

 ジャンクフードではあるが、完食できた。なんだか身体全体に活力がみなぎるような、そんな感覚が少しだけあった。

(とりあえず、買い物も行かなきゃな)

 ふと、机の上に置かれた大学のパンフレットや資格の資料が目に入る。そうだ。彼らもどうすべきか考えなくてはいけない。
 私の夢は叶えたい。だけど、妊娠している今は諦めなければならない。

(残念だけど、いつかは……)

 ネガティブな癖に諦めは悪いいつもの私がここで出てきたような気がした。成哉とはすっぱり身を引けたのに、自分の夢となると諦めが悪い部分が出ている。

(最悪、おばあさんになってからでも遅くはないし)

 今、ちょうどテレビでは田舎に帰り郷土料理等を提供している喫茶店を開店した70代の女性が、インタビューを受けている場面が映し出されている。彼女は喫茶店だけではなく、動画配信も行っているそうだ。

「動画ではそばの作り方と言った手料理が受けているそうですね」
「はい、たくさん高評価を頂けてうれしいです。皆さんいつも見てくださってありがとうございます」

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