一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 成哉が私の上着をめくりあげ、そこから胸に手を触れていく。

「すごいドキドキ言ってる」

 そう指摘されると、認めざるを得ない。成哉の私よりもすらっと細長くて無駄のない綺麗な手は、丁度私の心臓の真上付近に置かれてある。
 そこからぎゅっと揉んだり撫でたりを成哉は繰り返していく。
 胸への愛撫が終わったと思えば、成哉はゆっくりと、私が履いているズボンを脱がして、下腹部に手を伸ばした。

「……久しぶり?」
「うん」
「痛かったら言ってよ」
「分かった」

 下着の中へ、成哉の手がしゅるりと入っていく。
 そこへ入ったのが分かった瞬間、少しだけぎゅっとした痛みが走った。だが、これくらいは十分我慢できる範囲だ。慣れさえすれば痛みは消えるだろう。
 彼の綺麗に爪を短く切りそろえられた指が上下にゆっくりと動いていくのが、理解できた。下腹部に熱が溜まっていく。

(すごい……!)

 そのまま、私は頭をくらくらさせながら、彼に良いようにされていく。
 
(もっと早くにこうしたかったなあ)

 という、突如ちょっとした後悔が浮かび上がってきた。
 だが、私は彼とは違う世界の人間だ。仮に猛勉強して同じ高校、大学に進学していたとしても、接点を持てていたかどうかまでは、分からない。

(こんな、地味な女子なんてなあ……)

 すると、指の動きが止まった。

「緊張してる?」

 という、成哉からの問いかけ。私はついネガティブな物思いにふけっていて、そんなムードから脱線していたのを理解する。

「藤堂くんごめん。まだ……現実だと思えなくて」
「このシチュエーションに?」
「そう。……これまで、仲良いって感じじゃ無かったでしょ?」
「……」

 ちょっと、ネガティブが過ぎたかもしれない。

「だよな、びっくりするよな。……でも今は2人っきりだから」

 また、私の唇に成哉の唇が重なっていく。


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