一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「もしかして熱?」

 私は急いで近くの廊下にいたお手伝いさんに体温計を持ってくるようにお願いし、まことの体温を測る。

「37.9度……」

 やはり熱だ。しかも寒気がしているのかまことの腕はやや小刻みに震えているように見える。

「奥さま、小児科に連絡した方が良いかもしれません」

 とお手伝いさんが心配そうに申し出たので、私は彼女に連絡を任せて急いで受診の準備をした。

「お待たせしました。小児科に連絡したらすぐに来て下さいとの事です。タクシーも手配致しました」
「ありがとうございます。助かります」

 程なくしてタクシーが家の前に停車し、私とまことはそのタクシーに乗り込んだ。

「総合病院までお願いします!」
「了解しました」

 タクシーの運転手は女性。私と変わらないくらいの年齢だろう。華麗なハンドル捌きで時には近道となる細い道も通りながら予想よりも早くに総合病院に到着した。

「到着しました」
「ありがとうございます。これ、料金です」
「丁度受け取りました。レシート入りますか?」
「お願いします」

 彼女からレシートを受け取り、お礼を言ってタクシーを後にした。
 
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