一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 目が覚める。あれからどれくらい時間が経過しただろうか。
 気が付くと私は下着姿でベッドの上に横になっていた。

「堀田?」
「……藤堂くん」

 私の左横には成哉が横になっていた。それにしても距離が近い。

「起きた?」
「うん」
「痛くない?」

 今の所、特に身体に痛みは無い。下腹部に痛みと言うより違和感……らしき何かがあるくらいか。あと熱もある。
 痛くないと返答してすぐ。成哉のスマホが鳴った。

「藤堂くん。急患対応行ける?夜勤だけでは人手が足りなくて」
「ああ、すぐ行きます」

 急患対応?という事は医療系か何かだろうか。そう言えば彼は中学時代、医者を目指してるって言っていたような。
 もしかして、あれから夢を叶えて医者になったのだろうか?

「藤堂くんて、もしかして医者なの?」
「うん。外科医やってるだ。ベリが丘の総合病院で」
「え?!その、病院てあの……カフェがあるとこ?!」
「そうそう!!堀田あの病院知ってんの?」
「知ってるってか……そこで働いてるんだよね」
「えっまじで?!」

 お互いにベッドの上で向き合って目を丸くさせる。だが、少し間を置いて成哉は急いで服を着替え始めた。

「ごめん!呼び出しくらったからいく!これホテル代ね。おつりはいいから!」
「えっホテル代もおごってくれるの?!」
「うん。全然気にしないで良いから!!じゃあ!!」

 強風のような勢いで成哉はどたどたと退出していったのだった。私はぽつんとホテルの部屋に取り残される。

「……」

 得た情報量があまりにも多すぎて言葉が出て来ない。
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