一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 タクシーに乗り込み、行き先を告げた後運転手に車の行き交いが多いので何かあるのかを尋ねてみた。

「多分要人が訪れているのでしょう。この街には大使館もありますし、パーティーでもあるのでは?」
「成る程……教えてくださりありがとうございます」
「いえいえ。私はベリが丘に来てまだ間もないんですが、それにしてもこの街は高級志向ですねえ。まだ慣れなくて戸惑う事ばかりでして」

 やや恰幅の良い中年の男性運転手はそうけらけらと笑いながら語った。

「以前はどちらに?」
「ああ。都内の下町周辺での勤務でしたね。そこで10数年くらいいてこないだベリが丘の街に異動してきたんですよ」
「そうなんですね。私も以前は別の場所にいまして」
「ああ。やはりそう言う方多いんですかねえ。あ、高級住宅街にある喫茶店行かれました?」

 あの喫茶店の事だろうか。まだです。と答える。

「あそこのコーヒー美味しいので良かったら行ってみるのおすすめします。お昼のランチも手頃な価格なので」
「ほんとですか?」
「そうですそうです。日替わりランチが好きでよくたべてるんですよ。ぜひ行ってみてください」

 運転手がここまで太鼓判を押すくらいなので、本当にどのメニューも美味しいのだろう。
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