一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 階段を上がり自室へ向かい、扉を開いてベッドの上で横になった。

「はあーー……」

 まことは夜泣きをするタイプではないが、これまで夜にぽんと発熱する時含めて体調を崩す時が何度かあった。なのでずっと24時間気を抜けないでいる日が続いている。
 なので休める時には休んで体力を温存しておかなければ。

「寝よ」

 私はベッドの布団をかぶってそのままぎゅっと目を閉じる。

「……?」

 自室とは違う景色が目の前に広がっている。これは夢だろうか。良く見るとあの高級住宅街にある喫茶店のチラシに掲載されていたかのような、こげ茶を壁をメインとした部屋の中にいる。
 あちこちにアンティークな小物が置かれており、大きな年代物の古時計の真ん中付近には小さなからくり仕掛けの人形がガラスの窓の奥にあるのが見えた。

(多分、時刻が来たらその人形が動く仕組みだろうか)

 部屋の中にいるのは私1人だけのようだ。部屋の照明はやや暗め。窓の向こう側の景色は日差しと日の傾き具合からして夕方前だろうか。
 金色の入れ物やオルゴールに丁度窓からの日差しが当たって、きらきらと輝いているのも見える。他にも茶色くて丸いテーブルには透明のガラスの花瓶に複数の種類の花が生けられていた。

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