一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 確かにその手がある。1から店舗を作るよりも既存の店舗を受け継いだ方がお金はかからないか。
 だが、そのような事はたして良いのだろうか……?

「あのですね、実は彼女喫茶店をオープンさせるのが夢でして」
「……もしかして、この喫茶店を受け継いでくれるんですか?」

 店員がちらちらと私と成哉を交互に見つめる。

「えっ、でも私出良いんですか? だって私はまだ免許も取れていないし……」
「藤堂先生の奥さまなら、私は勿論歓迎ですよ!」
「ふぁっ、へっ……!」

 まさかここで肯定されるなんて。私はなんて言葉を言えば良いのか分からないくらいに混乱してしまう。
 このタイミングでまこととお手伝いさんが食事を済ませて会計に向かう事になった。支払いは成哉のおごりである。レジには店員と星田医師の祖父と思わしき人物が2人現れた。

「藤堂先生の奥さまなら、このお店譲ります。妻もお世話になりましたし、私もお世話になりました」
「成哉さんそうなの?」
「うん。2人共手術を担当した事があるんだ」
「そ、そうなんだ……知らなかった」
「なので喫茶店開業を目指すならぜひ考えてみて下さい。1から店舗を作るよりかは安く仕上がると思いますし」

 初対面なのにここまで良くしてくれるなんて、感謝しか無い。
< 83 / 135 >

この作品をシェア

pagetop