一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 朝6時過ぎに私は目を覚ました。ゆっくりもさもさとベッドから起き上がる。

「昨日買ったおにぎりでも食べるか……」

 部屋にはご丁寧に電気ケトルと電子レンジに、コーヒーや緑茶等といった各種お茶パックも完備されていた。

(至れり尽くせりだな)

 私はおにぎりと和風スープをそれぞれ電子レンジで温めて、1人机に向かい食べる。

「うん。美味しい」

 和風スープはしょうがの風味がほんのり入っていて、身体を芯から温めてくれる。
 おにぎりも美味しい。

「ごちそうさまでした」

 静かなのもなんか落ち着かないので、テレビをつけた。

「今日は午後から雨が降る見込みのようです」

 明るい茶髪の若いお天気キャスターが、ベリが丘のツインタワーを背景に、にこにこと営業スマイルを浮かべながらお天気を伝えていた。
 私はその映像を薄目で見る。

(一旦家に帰って傘取ってきてから、出勤した方が良いな)

 レジ袋にパッケージや割り箸なんかを入れて、ぎゅっと結ぶ。これは自宅のゴミ箱に捨てよう。

(こんなおしゃれでラグジュアリーな場所に、コンビニのご飯なんて似合わないよね……)

 さっと身支度を済ませて、成哉が残していったお金も回収する。

(流石に悪いよなあ……)

 1階に降り、チェックアウトをした。代金は結局私の財布から全て出してしまった。
 バーの代金と合わせてホテル代も……となるとさすがに気が引けたからだ。

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