一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「え、うそでしょ?」

 脊髄損傷。下手すれば歩けなくなるどころか寝たきりになってしまうのではないか。確かに今の私は首から下の感覚は無い。手を握ろうとしても指を動かせない。

(うそだ。こんなのうそだ)
「それで愛海。今から手術をする事になる。早めに手術しなければ手遅れになってしまう」
「えっそうなの?」
「そうなんだよ。だから愛海はどうしたいか聞きたい」

 手術するにあたって、私の同意が欲しいという事だろうか。それなら早めにしておくに越した事は無い。

「わかった。お願いします」
「了解。俺もいるから安心して」

 成哉は私の頭を軽く2度ぽんぽんと撫でてくれた。撫でてくれた箇所がじんわりと熱くなる。
 こうして私はまず手術を受ける事となった。動かないままの身体を成哉と看護師達の手によってベッドからストレッチャーへと移された後、手術室へと運ばれ、麻酔がかかった後、気が付けば手術室とは違う部屋の天井が視界に飛び込んできた。

(麻酔から覚めるとこんな感じなのか)
「愛海、気が付いた?」
「うん。目が覚めたよ。ここは?」
「ここは病室。手術成功したよ」
「ほんと?」
「ああ。だけどここからだ。リハビリ頑張って筋肉をつけていかなければならない」
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