一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 すると、成哉の横に女性が2人現れた。

「理学療法士の方達を呼んできたから、話す?」

 女性は2人とも明るい茶髪を1つに束ねたヘアスタイルでマスクを着用している。私よりかは年上に見えるが大体30代後半だろうか。
 また、片方の人物は耳にキラキラと輝く宝石のようなピアスも付けている。メイクも全体的に濃い。

「田中です。一緒に頑張りましょうね」
「松崎と申します。リハビリ頑張っていきましょう!」

 2人とも両手を握ってガッツポーズをしながらマスク越しからも分かるような笑顔を浮かべて、私を勇気づけてきた。

「はい、よろしくお願いします」

 2人が一度部屋から退出し、部屋の中は私と成哉の2人っきりとなる。

「まことは様子見で入院してるけど異常ないし明日にはもう退院できると思う」
「そうなんだ。良かった……」
「それと、俺の母親が今愛海の分の入院準備をしてくれてる。もう着くと思うけど……」

 すると、部屋の扉がガラッと勢いよく開かれた。

「愛海ちゃん!」

 成哉の母親の声だ。彼女は両手に大きな紺色のボストンバッグを持って息を切らしながら部屋に入室してきた。

「はあっ……交通事故にあったって聞いて……成哉、手術は?」
「愛海の手術はもう済んだ。成功したから次はリハビリだよ。まことは軽い擦り傷だけで異常は無い」
「そうなのね……」

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